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秋季キャンプコラム

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2022.11.04
原点回帰!鍛える安芸
10月31日(月)〜11月3日(木・祝)

指揮官自身が現役時代から慣れ親しんだ南国安芸で、新生岡田阪神が来季へ向けた本格的な助走態勢に入った。進化を望む主力組とアピールする若虎たち。希望膨らむ第1クールを追った。

若手主体の精鋭部隊

10月31日(月)甲子園の秋季練習が終了。新体制の滑り出しとあって猛虎ナインは幾分かの緊張感を持って連日汗を流した。それぞれが来季への課題を確認して次のステップへと向かう。

秋季キャンプ参加メンバーが発表された。投手は西純、才木、浜地ら12名。野手は梅野、大山ら主力選手を含めた20名。みやざきフェニックス・リーグ参戦の若虎も含まれる。途中入替えもある事から、侍ジャパン強化試合に出場予定の湯浅、佐藤輝、中野、近本の4選手とコンディション不良の森木らは当初メンバーから除外されている。(その後、フェニックスリーグ巨人戦で右肘の張りを訴えた小川一平投手が参加を見合わせる事になり、鈴木勇斗・川原陸両投手がメンバーに追加された)

オレにとっては15年振り

11月1日(火)秋季キャンプ参加メンバーが空路高知入り。高知龍馬空港では、地元から岡田監督・百北球団社長に花束が贈られる。一行はチーム宿舎で旅装を解き、厳しい鍛錬に備え英気を養った。

2日(水)秋晴れの安芸タイガース球場で秋季キャンプがスタート。33名の精鋭たちが眼下に広がる黒潮を背景に爽やかな汗を流す。安芸市の歓迎式典で横山幾夫市長から激励を受けたナインは、野手は午前中シートノックや部門別守備練習の後、午後にはフリー打撃・バント・走塁などのローテーション。投手は投内連係、ブルペン投球と強化トレーニングを経て、個別練習に取り組んだ。

「(秋季キャンプが)3年振りと言うても、オレにとっては15年振りやから」。来春からファームキャンプが沖縄へ移転する事情もある中、現役時代から汗を流したいわば『原点』の地で新政権のスタートを切った事に岡田彰布監督は感慨深げだった。「1週間甲子園でやったけど、安芸に来るとキャンプという雰囲気もあるし…ちょっと違うよね。(試合をする場所である甲子園より)こっちの方が練習しやすい」。

指揮官は初日から精力的に動いた。メイン球場でシートノックを見届けるとブルペンへ移動し、最後に残った西純が投球を終えるまで捕手の後ろからつぶさに一挙一動を観察する。再びメイングラウンドへ赴き、フリー打撃後の大山に「打つポイントを前に」と直接指南。更にサブグラウンドへ降りて、個別の内野特守を行う熊谷・小幡・髙寺に捕球時の足の運びを実演付きで徹底的に教え込んでいった。

「(もう少し前のポイントで捌けと言われて)次への動作をスムーズにやりやすいなと凄く実感した。一気には難しいけど。これまで(後ろに体重が)溜まっていた感じもあったので、一番は次の動作がしやすくなった」事が収獲だと小幡竜平内野手は語る。土のグラウンドを本拠地とするだけに「イレギュラーしても(この捕り方だと)胸の中で収まる」など効能も大きい。監督もショートでの起用を示唆しているが、「自分のやれる事を精一杯出せるように準備するだけかな」と心境著しいホープは真摯な姿勢を崩さなかった。

アウトハイへの意識

伊藤将・浜地ら一部を除いて毎日プルペン入り。第2クールまでは直球ばかりを投げ込む指令を受けた投手陣。外角高めを意識して投げる点でも、これまでとは違った印象だ。

「元々フォームとかボールの感覚とかを上げて行きたかったので(プルペンには)ほぼ毎日入るつもりだった」。今オフ投球フォーム改造に取り組む才木浩人投手は、直球ばかり60球を投げ込んだ初日の感触を「ちょっとイマイチかな」と振り返った。ずっと体幹や下半身の動きに対して「ちょっと右腕だけズレてる」と感じていた事から、「オフにはがっつり意識するしかない」と遅れがちなテイクバックのタイミングを変える決断に至った経緯を説明。「脱力」を意識して無駄な力が入らないようにする事も改革の一貫だと話している。

監督からは、桐敷・村上の名前が上がった。「やっぱり桐敷は良いなぁ!(一軍登板も経験して)その辺は違いがある。コントロールも良いし。今日もストレートを高めばっかりに投げろと言っているけど、ボールのキレとかは凄くある。村上なんかは一軍の経験少ないらしいけど、ファームである程度成績残せるって言うのは、その位ボールに力があるよな」。

「来年はチャンスかと…ちゃんとアピール出来るように思っているし、その中で監督が評価して下さったのは、一つ嬉しい」。新人で開幕シリーズの先発を務めた桐敷拓馬投手は、投球を受けた梅野からシュート回転の改善を求められる中で、直球の質の向上とスピードアップに取り組んでいる。アウトハイへの意識は、低く投げる事をこれまでやって来て「新鮮な感じがあった」という。「そこを狙ってちゃんと投げる事が出来れば、低めにも意識して投げられるかなと思うので」どこへ投げるにせよ、コントロールする意識が大切だと話した。

ブルペンで80球を投げた後、安藤コーチから「(ちょっと投げ急いでいる時があるから、しっかり軸足に溜めて投げよう」とのアドバイスを受けた村上頌樹投手。「フェニックスは真っ直ぐが基本だったので、それで体が慣れて来たというか、今しっかり身になって球の強さも出て来たのかな。(外角高めの意識については)低め低めと言われて投げてきたので新しい感覚というか。でも、やっぱり高めに強い球が行きやすいので、この感覚をしっかりと持って、次は低めに投げられるようにやって行きたい。今ボールのかかりも良いし、真っ直ぐが走っている感覚があるので、良い練習が出来ているのかなと思う」と、確かな手応えを口にしている。

一塁守備に太鼓判

3日(木・祝)雲一つない日本晴れとなった文化の日。球場には多くのファンが訪れ、駐車場も満杯の賑わいとなった。僅か2日間だけの第1クールだったが、指揮官は満足気な様子で総括する。「(選手の把握は)大体な。野手は二遊間、何となく対応出来そうな感じはするけどな。まだまだ、これからやけど」。

キャンプ直前、期待を口にしていた前川右京外野手に訊かれて、「打撃は悪くないよな。(来季の戦力として)バッティングは可能性があると思うよ。スイングが力強い。それで結構飛ぶね。亀山をちょっとスケール大きくした感じ。(ユニフォームの着こなしなど)スタイルがそんな感じ」と、1990年代、新庄剛志・現日本ハム監督と共に人気を博したOB亀山努氏の名を上げてみせた。「何というか、強引じゃなしにバットが素直に出て、その割に距離も出る。(ファームも沖縄でキャンプを行う来春は)一・二軍振り分けても近くにおるからな。一軍レベルの左打者と一緒にやらせてみても面白いか分からんな」。

投手では新たに独立リーグ高知出身・石井大智投手の名を口にした。「コントロールとかボールのキレとか。今みんなストレートしか投げてないけど、見たら分かるやろ。狙ったところに投げられるというか、高めを狙ってある程度ソコヘちゃんと行くもんな。思ってる以上に良かったよ」と絶賛だ。変速右腕の岡留英貴投手についても、「球が引っかかったら物凄く良い球来るな。そういう球が増えて行ったら良い」と話して、今後の成長に期待を寄せている。

個別練習も見た上で、大山の一塁守備に関しては非常に高い評価を与える。「そらもう全然心配してない。大山は守備うまいよ。グラブ捌きも、うん。ファースト言うたら大事やからな、ハッキリ言うて。走者が出た時に絡む事が多いから。バント処理にしてもな。結構大事なポジションやで、ファーストは」。

なお、植田海内野手が初日の練習中に右手人差し指を負傷。この日途中、本隊を離れ帰阪した事が明らかとなった。

とにもかくにも新体制による秋季キャンプは、濃厚な内容で滑り出した。チャンスと捉える若虎たちが必死にアピールする姿を見て、来季への楽しみは増すばかりである。