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春季キャンプコラム

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2023.02.13
百花繚乱!紅白戦
2月9日(木)~2月12日(日)第3クール

沖縄キャンプは、序盤から中盤へと移行。今季初の紅白戦が組まれ、いよいよ本格的な実戦段階に入った。

名手伝達『角度と幅』

9日(木)第3クール初日。OBの鳥谷敬さんが臨時コーチとして4年ぶりに猛虎ウェアを纏い宜野座のグラウンドに立つ。ナインがビジター用ユニフォームで練習に臨んだこの日は、シート打撃に才木・西純・湯浅らが登板し、キャンプ全体の活気も一段高まるような内容となった。

圧巻は、佐藤輝が西純のフォークをバックスクリーンへ運んだ一発だ。早目にトップの位置を決める新しいフォームで好感触のアーチを描いてみせた。これには佐藤輝に苦言を呈して来た指揮官も、思わずニンマリ。「西(純也)もあの球を本塁打にされるとは思わんかったやろなぁ」と打たれた投手を気遣っていた。

WBC公式球で調整する湯浅は打者4人に対したが、植田・原口・木浪に3連打を浴びた。それでも、試投した横のスライダーの感触もまずまずのようで、本人としては納得の手応え。守護神候補の大本命に、全く動じる様子は無かった。

全体メニュー後、サブグラウンドでは特守が行われ、二遊間を担う木浪・中野・小幡の3人が、鳥谷コーチの直接指導を受けている。「本当に能力の高い選手も多いし、そういう選手たちと身近に接する機会もなかったので非常に新鮮だし、このマスコミやファンに囲まれてやるのも懐かしい感じがする」。鳥谷敬臨時コーチが印象を口にする。「(特守では)どういう捕り方が良いとか駄目とかじゃなく、色んなバリエーションを。前に出たり、引いたりとか、軽く投げたり、思い切り投げたり、とか色んなバリエーションを持つ事によって(長いシーズンの中で)困った時に使えるというのは、自分の経験上あった。そういう意味で、色んな感覚とか考え方を持ってほしいという事で」普段はやらないような練習を意識的にやって体感する事で、守備に幅を持たせる大切さを強調した。「打球が一つ一つ違うのと一緒で、捕り方と言うのもそれに合わせて変化していかないと」。阪神のショートを長年に渡って守り続けた名手は、ただ正面で捕るとかでなく、前後を上手く使ったり、様々なアプローチを試みる姿勢を後輩たちに求める。

「毎年競争になっているけど、その中でも凄くチャンスのある年だと思っているので、そこにちゃんと結果を出してレギュラーに定着出来るように頑張りたい」。プロ5年目にして正遊撃手の座を窺う小幡竜平内野手は、この日のシート打撃で村上から中前安打を放ち、打撃面でもアピールした。今キャンプで自ら掲げるテーマは、守備の足捌きと打撃の力強さだ。

鳥谷コーチの教えは大変貴重なモノだったという。「凄く有意義だったし、一つ一つの言葉が自分に入って来るというか、感心するばかりだった。(その中でも響いたのは)角度と幅。打球に対しての捕球時の角度であったり、その捕る幅。前だったり後ろ。そこの合わせ方であったり、そう言ったモノを細かく教えてくれて、凄く分かりやすかった」。入団当初はファームで過ごす事が多く、スター選手だった鳥谷コーチと交流する機会も殆どなかっただけに、大先輩直々の指導は願ってもない好機。「今までは(打球と)衝突して捕れなかったものが、前後の幅がある事で捕球する事が多くなって、その分エラーも少なくなるんじゃないかなと思う」。当初は意識しながら、いずれは自然に出来るように。名手の教えを体に染み込ませるまで練習を続ける事を心に誓っていた。

10日(金)午前中は土砂降りの雨に見舞われた宜野座だが、午後には天気が回復。メイン球場のフリー打撃で大山が目の覚めるような打球を量産して、スタンドの視線を釘付けにした。

午前の守備練習では投内連係・ランダウンプレーなどが行われ、首脳陣は厳しいチェックの目を光らせている。岡田彰布監督は、「送球ミスとか出たなあ」と課題を指摘。失点に繋がるところだけに今後もこうした練習を重視していくものとみられる。

ライバルの明暗

11日(土・祝)今キャンプ初の紅白戦を観ようと朝から長蛇の列が出来た宜野座村野球場。一軍メンバーによる6イニング制とファーム中心に編成される4イニング制の変則的なダブルヘッダーが行われた。1試合目は白組・桐敷と紅組・村上が先発。2回表二死からショート小幡の失策で打席が回って来た木浪が、右越え先制2点本塁打を放ち紅組が先制する。その後3点ビハインドで6回裏最後の攻撃となった白組だが、二死からノイジー、ミエセスの長短打と原口の中前適時安打で2点を返し無安打無得点を免れた。(紅組3-2白組)

「(カウント)3-2まで持っていっての本塁打だったので良かったと思う」。桐敷が投じる肩口からのスライダーを右翼へ運んだ木浪聖也内野手は、チーム紅白戦第1号の感想を語った。オフから取り組んで来たフィジカル強化の成果と見られる中で、「やっぱり左投手から打てたと言うのは本当に大きい」と胸を張り、微笑みを湛えている。

5回表の守備で左中間の飛球に追いつきながらも落球し、カットマンへの送球も乱れたミエセスの拙守には、「ライトが一番上手い、って自分から言うたのにな」と指揮官も苦笑い。それでも、日本野球に取り組む姿勢を高く評価し、今後も多くの出場機会を与える事を明言している。

続く2試合目は、注目のドラ1ルーキー森下がDHで打席に立ち、四球と内野安打の結果を残してファンの喝采を浴びた。(白組1-0紅組)無事実戦デビューを飾った森下翔太外野手は、「お客さんも入って独特な雰囲気の中、自分の中で出来る100%のプレーが出来たのでよかった」とホッとした表情を見せている。

「若いヤツでも自信つけて急に伸びるのもいる。そう言うのを目の当たりに出来る訳やから。これも一軍、ファーム沖縄でやったお陰や、はっきり言うて。これはもう沖縄で出来た大収穫やろ!」。指揮官は、沖縄で初めて実現した合同紅白戦の意義に大満足な様子だった。

才木『数段上』の感触

12日(日)連日の合同紅白戦。白組・才木と紅組・西純のホープ2人の先発対決となった。初回白組はトップ・近本が右前安打で出ると、クイックを挟むなど西純の警戒を掻い潜って二盗を決める。二死後、大山の左前適時打で先制のホームを踏んだ。紅組も2回表に才木の高め速球を捉えた原口の左越え本塁打で同点に追いついた。小林が登板した6回表には無死満塁から2番・糸原のライト線2点適時二塁打で勝ち越し。続く渡辺諒の左犠飛でリードを広げる。終盤にも両軍点を取り合った末に、紅組が6対3で勝利を飾った。

「良いところと悪いところが出たかな?という感じの登板だった」。3回を投げて2安打1失点で降板した才木浩人投手は、冷静に内容を振り返る。「ストレートの感じはだいぶ良い。自分の感覚としては絶対去年より良いし、フォームのバランスとか、リリースの感覚とか、打者の反応とか、どれを踏まえても真っ直ぐに関しては、去年より数段よくなってる感じがする」。場内の球速表示はMAX157km/h。本人はこの数字自体には無関心だったが、オフから取り組んでいる体の使い方や脱力の感覚取得に自信を深めた様子。これを更に継続していく意向を示していた。

白組2人目として2回を完璧に抑えた加治屋蓮投手も「去年までだったら追い込んで変化球で勝負していたところを真っ直ぐで勝負出来たりとか、右打者の外の真っ直ぐは感触良く投げる事が出来ているので、そこは収獲というか、去年とは違うところなのかな」と手応えを口にする。「動く球がボクの特徴の1つなので、内角外角へ低く強くと言うところを意識して投げている。結果良いところに決まって見逃しとか取れているので状態としては凄く良い」と話していた。

「そやなぁ、こんな時期で打ち返せるんやな、バッター。凄いと思ったな」。岡田彰布監督が率直な紅白戦の感想を述べる。「ブルペンの球見たら分かるけど、才木にしても西(純矢)にしても相当良い球放ってるぞ、この時期にしたら。・・・そういう意味では、オレはもう3イニングではヒットも出えへんと思ってたよ。原口なんか1・2・3で行きよったと思うけど、1・2・3でも打てんよ、ハッキリ言うて」。変化球の見送り方を含めた打者の対応力に驚きの表情を浮かべる。「なかなか5~6回位までは締まったゲームやったよな。一軍の戦力として見て投手の方も野手の方もちゃんと対応してたので、ここまでは順調やないかな」。

紅白戦で大いに盛り上がった第3クール。ファーム組の台頭もあって百花繚乱の様相を呈するチーム内競争はますます熾烈となって行く。